NPO法人農都会議 バイオマスWG/農都交流・地域支援Gは、1月31日(水)夕、「森林環境税と新たな森林管理システム ~国産材の利用拡大に向けて、地域の事例を学び、制度について考える」勉強会を開催しました。
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1月31日WG/地域G勉強会

勉強会に先立って、「新春賀詞交換会」を開催しました。当会の杉浦代表理事からご参加の皆様への御礼挨拶がありました。内容は、新エネルギー新聞1月8日号に掲載の年頭所感(PDF)をご参照ください。

当会は、今年度、「山には木が沢山あるのに、なぜ出ないのか?」をテーマに勉強会を続けています。また、地域の事業化支援として、茨城県の森林・里山等の地域資源活用、都市住民による『いばらきサポーター』養成、地域の活動リーダー育成等を行う「いばらき塾」を始めています。
国の「森林環境税」、「森林環境譲与税」、「新たな森林管理システム」等の制度が実現に向けて提案されている折から、制度検討の状況と地域の事例を学ぶ機会を設けました。

会場の港区神明いきいきプラザに約80名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。

第1部は、最初に、林野庁森林整備部計画課課長補佐の城風人氏より、「新たな森林管理システム・森林環境税(仮称)について」のテーマで、講演がありました。

1月31日WG/地域G勉強会

城氏は、森林の現状(国土の約7割が森林、OECD加盟国中2位という世界有数の森林国)、公益的機能、森林の適正な管理の必要性、森林吸収源対策の財源確保に係る税制改正要望等の経緯(平成30年度税制改正大綱、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)の創設)、制度設計イメージ(各年度の譲与額と市町村及び都道府県に対する譲与割合及び基準)、府県における住民税の超過課税の導入状況などについて説明をされました。
また、森林整備の様々な効果、森林資源・林業の現状、新たな森林管理システムの課題、森林・林業施策の方向性についてもお話しされました。

続いて、茨城県農林水産部林政課森づくり推進室室長補佐の細田浩司氏より、「森林湖沼環境税を活用した森林の保全・整備について」のテーマで、講演がありました。

1月31日WG/地域G勉強会

細田氏は、茨城県の森林・林業の特徴、森林湖沼環境税の活用についてお話しされ、荒廃した森林の間伐や平地林・里山林の整備など適正な森林整備の推進(森林機能緊急回復整備事業、身近なみどり整備推進事業)、公共施設等の木造化・木質化、木造住宅建築への支援などいばらき木づかい運動の推進(いばらき木づかい環境整備事業、いばらき木づかいの家推進事業)、市民団体の活動に対する支援、森林環境教育の推進など県民協働による森林づくりの推進(いばらきの森普及啓発事業、森林環境教育推進事業)などの説明をされました。
また、森林・林業における課題として、今後の税制、目指すべき森林(人工林)管理の姿、第3期森林湖沼環境税活用事業(森林の保全・整備)の施策の考え方などについてもお話しされました。

第2部は、質疑応答と「新たな森林管理システムと森林環境税で山はどう変わるか?」をテーマにディスカッションが行われました。

1月31日WG/地域G勉強会

モデレーターは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク副理事長、一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議理事、NPO法人農都会議理事・アドバイザーの竹林征雄氏、コメンテーターは、NPO法人蔵前バイオエネルギー理事長の米谷栄二氏と、株式会社つくば林業代表取締役の松浦晃氏でした。

1月31日WG/地域G勉強会

意見交換会に先立ち、竹林氏から、「世界の先進国の潮流から日本が如何に遅れているか。かつては世界の環境問題をリードする位置にいたが、現在では“周回遅れ”に甘んじている感がある。何故そうなってしまったのか? その辺りに気付くためにも、昨年12月のNHK報道番組『激変する世界ビジネス 脱炭素革命の衝撃』をぜひ見てほしい」とコメントがありました。

松浦氏から、施業の現場の課題について説明があり、参加者からは、路網整備が必要との意見や森林環境税の使い道などの質問がありました。
最後に、城氏は、「今日は制度を紹介した。今後も皆さんから意見やアイデアをいただきたい」とお話しされ、米谷氏は、「林野庁予算3,000億円に600億円が加わることになる。しっかりした制度になるよう国民と行政が一緒に努力する必要がある」とまとめました。

1月31日WG/地域G勉強会

スタッフの一人から、「林野庁の城氏から、講演の前半部で日本林業に関する各種統計資料を用いて、森林環境税の果すべき役割について説明していただいた。
森林環境税の創設が決まったら、国民一人一人から1,000円/年を納めてもらい、これを財源として森林の整備を進める。最終的には年間600億円の財源を確保する。また新税と併せて、所有者による手入れが行われていない森林の整備を進めるための新たな森林管理の仕組みも導入される。これらにより地域の山の手入れが進むことが期待される一方、国民への説明責任も生じる。
また、まだまだ制度の内容が分からない部分もある。既に県税として徴収している37府県では、市町村では両方の財源の使い分けなどの問題が発生する懸念もある。これからどのように課題を整理して取り組んだらよいのか。
城氏は、講演の前半部で日本の森林・林業に関する各種統計資料を用いて、森林環境税と新たな森林管理システムの果すべき役割について説明された」との感想がありました。

今回も盛況な勉強会となり、森林整備と財源の関係についての理解が進んだと思われます。多様な視点で課題を深く考えるとても有意義な場になったとしたら幸いです。
講師並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。