いばらき里山・バイオマス協議会は、12月7日(金)夕、第1回研究会を開催し、農都会議 農都交流・地域支援Gも参加しました。
→案内書(PDF) 会場の専修大学神田キャンパスを会場に10数名の参加者が集まりました。協議会の原田会長のあいさつに続いて、、三名の研究者がフランス革命期、茨城県の戦後期、現代の山林という歴史を飛び越えて、「森林・農地の所有」を基本テーマとする研究発表がありました。 |
はじめに、専修大学文学部教授の近江吉明氏により、「フランス革命初期におけるオルヌ県農山村民と森林用益権 ―日仏比較史の視点で―」のテーマで発表がありました。 近江氏は、茨城県南部における今後の山林・森林の在り方を「森里川海の連携」の思想から展望するとして、「フランス革命当時は農山村居住者が人口の8割を占め、小農民は森林に依存して生きていたが、貴族階級に森林利用の特権を奪われたことが背景にある。フランス革命はバスティーユ占拠が出発点と言われているが、それ以前に、森林用益権も含めた共有県の回復要求の運動があった。中小都市部の食糧蜂起から領主城館攻撃へと拡がった。革命は私的所有権をめぐる争いでもあった」など、各教区の陳情書資料を元に、詳しく説明されました。 続いて、専修大学経済学部教授の永江雅和氏により、「戦後未墾地開放の実態 ―茨城県の場合―」のテーマで発表がありました。 永江氏は、「戦後の食糧難と外地からの帰国者受け入れ対策として、戦後開拓政策と未墾地買収が行われた。茨城県は戦後開拓で最も苦しんだ県。割当面積は全国7位だが半分が未実績で最下位にとどまり、訴訟件数も全国一だった。戦後日本の農地改革は、耕作権保有者に所有権を移転する改革。一方、『もう一つの農地改革』と言える戦後開拓は、耕作権のない人々に所有権を付与したためトラブルが続いた」など、研究成果を発表されました。 最後に、東京財団政策研究所研究員・政策オフィサーの吉原祥子氏により、「所有者不明土地問題の現状と課題 ―都市と農村の視点から―」のテーマで発表がありました。 吉原氏は、「所有者不明土地とは、所有者の所在が不明の土地のこと。戦後の農地解放のねじれに起因する制度的問題の面が大きい。土地所有制度は、明治以降右肩上がりの経済が前提だった。変化の時代に公共的観点から行政の対応はどうあるべきか、人口減少時代の相続のあり方などを考えたい。国の制度が不十分でも、地域社会の意識が高ければ土地管理はできていた。現代は、明治以降の土地制度では対応できなくなっている。所有者不明土地の利用促進策(2018年6月所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)は、あくまで応急措置。相続冬季の促進や土地情報基盤の整備、受け皿(中間組織、公有化)の整備など中長期的な予防策が必要」などと、問題の大きさと課題解決の困難さを説明されました。 |